本
日来院された紹介患者さんの希望は、「最高の治療をしてくださ
い」との事だっ
た。
最高であれば、インプラント治療だろうとその患者さん
は思って、私
のところに紹
介されてきた。お口の中を拝見すると、なるほど、今まで歯で苦労なさってきた様子がわかった。ご本人もそうだが、それを診てきた先生も随分ご苦労ななされ
たと思う。
患者さんは若い頃から、歯周病がひどく、現在、歯は7
本しか残って
いない。かろ
うじて残っている歯も、おそらく全て抜歯であろう。少なくても2本は、直ぐにでも抜くような歯である。
プラン立てを始める前に、色々と覚悟を決めていただく
必要があるの
で、最悪の想
定(インプラントが出来ない、時間や費用がかかるなど)をしながら、今後の青写真を患者さんと話した。
その中で、患者さんが「インプラント治療が最高」とい
う概念をお持
ちだったた
め、それを改めさせていただいた。理由は治療に最高というものはなく、最良程
度であるからだ。インプラント治療は、義歯(入れ歯)に比べれば確かにいいかもしれないが、健康な自分の歯には及ばない。
インプラント治療に対する過度の期待は禁物である。と
かく、インプ
ラント治療を
至上の治療法と、信者のように思っている患者さんや先生には、あえて、インプラント治療の限界や欠点を説明させて頂くようにしている。
楽観や油断、慢心が思いもよらぬ事故を誘発とも言え、
また、過度の
期待は、正常
な治療結果も正常と受け入れていただけないことがある。悲観主義者ぐらいが丁度いいように思える。
今日いらした別の患者さんは、左下奥歯のインプラント
を入れ、半年
経ったが、帰
り際の挨拶で「先生、あんなに困っていた歯が、今ではなんでもなかったように生活できます。(インプラントを)やってよかったです。」と言って頂けた。
今は、ニコニコのこの患者さんも、最初は暗い感じの方
であった。
他院からの紹介のこの患者さんは、どうにか抜歯せず
に、今ある歯を
残して欲しい
とのことで、1年程前に私のところにいらした。拝見すると明らかに抜歯適応で、5年ぐらい前から同じような状況を繰り返し、私のところでも何とかならない
かとのことでした。
歯の中は穴が開き(パーフォレーション)、歯の根には
病巣が認めら
れた。抜歯適
応で、抜歯を促したところ、歯を残こすことを目的に今まで我慢してきたのに
どうしても抜きたくないとの事であった。つまり、患者さんにとっての最高の治療は、歯の保存であった。しかし保存治療とは、残せる(残すべき)歯を残す治
療で、残せない(残すべきでない)歯を残す、治療ではない。
そこで、「患者さんの望みは、歯を口の中に置いておく
事ですか?そ
れとも、おい
しく食事ができるようになることですか?」との質問をした。当然、患者さんは「おいしく食事が出来るようになりたい」とおっしゃった。
患者さんの望みは、「自分の歯でおいしく食事をするこ
と」である
が、現代の歯学
では、今の歯を残し、きちんと食事が出来るようになる可能性は限りなく少ないことを説明した。
説明するとがっかりしていた様子でしたが、「但し、抜
歯して、イン
プラントにす
ればその可能性は、限りなく大きい」ことをお話した。
結果、渋々、抜歯を承諾していただき、インプラントに
なりました。
最高の治療か
ら最良の治療に転化したといえます。
一番良い治療法は、何度も言うように、自分の歯が再び
生えてくるよ
うな治療法で
す。しかし、それは現時点では出来ないわけで、その中から、最良の治療法を選択するのが、我々歯科医師の使命でもある。